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治水対策のあり方をめぐって    ~千葉県のすぐれた事例~② [小櫃川の水を守る会]

千葉県自然保護連合 中山敏則
 *堤防強化を叫ぶだけではダメ

 新聞や週刊誌などは、西日本豪雨被害や治水対策をとりあげた記事で、水源開発問題全国連絡会の嶋津輝之共同代表や京都大学名誉教授の今本博健氏(河川工学)のコメントをたびたび載せている。二人はダムの不要性や有害性を指摘する。ダムは洪水対策として役に立たないことや、異常時の緊急放流によって下流域の洪水被害をより大きくすることなどである。そして二人は、「治水対策の王道は河道整備」「堤防強化は治水対策の要」と言い、堤防強化の重要性をしきりに強調する。
 ダムの不要性や有害性を指摘するのはいい。堤防強化を強調するのもいい。だが、堤防強化だけを叫ぶのは現実的ではない。越流時などに決壊する恐れのある河川堤防は無数にある。日本の河川堤防は、経済性や施行性、耐久性などから土盛りが原則となっているからだ。それをすべて鋼矢板の打ちこみなどによって強化するのは絶対に不可能である。
 日本にある河川の河川数と総延長をみると、一級河川は1万4065河川、8万8100km、二級河川は7081河川、総延長3万5870kmである(2017年4月30日現在)。何十キロも続く河川堤防の1カ所でも弱点があれば、洪水時に破堤の恐れがある。
 さらに堤防を強化しても内水氾濫はくいとめられない。「バックウォーター現象」による越水氾濫も防ぐことができない。「バックウォーター現象」というのは、支流が本流に合流するさいに水がせきとめられるかたちとなる現象である。
 堤防やダムなどの構造物に依存しすぎることなく、流域全体を考慮した総合治水対策を積極的にすすめるべき。これが現実的な政策である。ようするに、武田信玄や徳川家康など戦国武将の治水対策に学べ、ということである。
 嶋津氏と今本氏は遊水地の整備に否定的である。ダム重視と堤防強化偏重は近代土木技術の過信という点で共通している。信玄も家康も、堤防強化偏重では洪水被害を防げないことを経験的に知っていた。

絵は武田信玄が築いた霞堤の仕組み
〔追加図〕霞堤のしくみ.gif
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