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景観の持つ力とは何か 5 [小櫃川の水を守る会]

 歌人若山牧水のことを、ちょっと紹介しておこう。
旅を愛し、旅にあって各所で歌を詠み、日本各地に歌碑がある。大の酒好きで、一日一升程度の酒を呑んでいたという。自然を愛し、特に終焉の地となった沼津では千本松原や富士山を愛し、千本松原保存運動を起こしたり富士の歌を多く残すなど、自然主義文学としての短歌を推進した。(ウイキペディア)

 牧水の寄稿文の中に「吾妻渓谷」について書いた文章がある。馬車に揺られながら、この渓谷に深い感慨を覚えたことが書かれてある。特に岩の合間にしがみついているような老木のさまが何とも言えない見事さであるという。ここでの印象が忘れられず、再度訪れることになる。このときは歌集の編集のためであったが、旅館に着くと早速渓谷を見に行く。歩きながら22種もの歌を詠んだそうな。大きなつり橋がかかっていて、その中央に行き、そこで酒瓶の蓋を抜き、じっくりと飲み始めたそうである。結局そのとき歌集は作られなかった。1週間酒を飲んで過ごしたとのことである。

 このときの一文の中に、記録しておかねばならぬ文章がある。
「私はどうかこの渓間の林がいつまでもいつまでも、この寂と深みとを湛えて永久に残っていてくれることを心から祈るものである。ほんとに土地の有志家といわず、群馬県の当局者といわず、どうか私と同じ心で、このそう広大でもない森林のために、永久の愛護者になってほしいものである。もしこの流れを挟んだ森林がなくなるようなことでもあれば、諸君が自慢しているこの渓谷は、水が枯れたよりも悲惨なものになるに決まっているのだ。」(現代仮名遣いに訂正)

 牧水が熱望したこの吾妻渓谷が悪名高い「八ッ場ダム」の現地なのだ。この渓谷を水の底に埋めようとしている。首都圏の水は十分に足りているというのに・・。

 牧水の見た吾妻渓谷は次の世代はもう見ることができない。文化の共有は地域だけの問題ではない。われわれ国民すべてが共有者なのだ。先生は、熱を込めて語り続ける。(続く・明日最終)

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