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地方政治には「有利な借金」というものがあります。 [市政全般]

 館山市議会・石井敏弘議員のブログで、興味深い文章を読ませていただきました。ご本人の了解を得ましたので、そのまま紹介させていただきます。    kawakami

 民間にもないし、国政にもありませんが、地方政治には「有利な借金(有利な起債)」というものがあります。借金をすると得をする国の制度です。

 例えば、10億円の借金をすると、後年、国から5億円分くるというものです。この事例だと、交付税措置50%と言い、元本と利息の50%が後に国から地方交付税として、その市町村に配分されるのです。

 こういう場合は借りないと損をします。さらには、臨時財政対策債という交付税措置100%のものもあります。10億円借金すると、元本と利息の返済を国が全部、後年に負担するということで、実質的には借金ではないという理屈です。

 でも、それなら、国が50%を補助金で渡すとか、100%を地方交付税でそのまま配分すればいいだけです。

 地方議員は全員が、この制度を謎だと思っていますが、ダラダラと長年続いている国の制度です。
100%の臨時財政対策債は2001年からですが、交付税措置される有利な借金は昔からあります。
ということなので、私は概ね1億円以上の借金の場合は、いつも交付税措置の割合を聞いています。

9月議会では、30億6,680万円の工事費がかかるゴミ処理場の大規模改修議案が出たので聞いてみました。
議会での答弁はややっこしいのですが、以下のように返ってきました。

「国庫補助金額は,約7億4,500万円,市債が約19億6,500万円,一般財源が,約3億5,700万円を見込んでおります。また,市債19億6,500万円の内訳ですが,補助事業分が約13億4,000万円,単独事業分が約6億2,500万円で,交付税措置の割合は,補助事業分が50パーセント,単独事業分が30パーセントとなります。実質的な館山市の負担は,交付税措置額を考慮しますと,約14億6,400万円の見込みとなります。」

整理すると、
総費用が、30億6,680万円
国からの補助金が、▲7億4,500万円 
国からの交付税措置額が、▲8億5,750万円 

市の実質負担が、14億6,430万円
となります。

 実質の負担は、15億円近くて、15年から20年くらい施設は使えるので、その間に市で用立てるということになります。大規模改修の費用としては高くないと思います。

 こんな感じで、毎回、私は財政負担を見ているわけです。また、私が毎回、聴くので、職員も先に説明してくれることが増えました。

ところで、この後がミステリーなのですが、誰も本当に交付税措置が国からなされているか知らないのです。

 地方交付税は毎年、40億円くらいの金額が国から来ます。ありがたいことに、年々増えていく傾向がありますが、その40億円の内訳は誰も知りません。だから、交付税措置をすると言っても、本当に来ているかは誰も確認できないのです。こっそり削られてもわからないのが怖いのです。

 しかし、地方交付税を担当する総務省には、細かい明細が必ずあります。なぜ、公表しないのでしょうか?もしかして、こっそり削っているのか・・

 館山市の一般会計の借金は180億円くらいありまして、その約70%は交付税措置される見込みです。実質負担は30%で、54億円くらいのはずです。しかし、それが本当なのかは誰もわからないという、おかしな状態です。理論的には、そのはずです。でも誰も確証がありません。地方交付税の謎に不安を抱いているのは館山市だけでなく、全国の地方自治体の悩みでもあります。

 さて、最初に戻りますが、この「有利な借金」という制度は何でしょうか?

国の理屈は一応ありまして、わかりづらいし、わからなくていいのですが、
「地方の税金をそのまま各自治体のものにすると、自治体間の格差が大きすぎる。一部を国がまとめて徴収して、地方に分配している。これにより、貧しいところは国から多く渡し、豊かなところは、むしろ渡す側だ。これが地方交付税制度だ。

 ややこしいが、地方交付税というのは、国が集めて配分しているだけで、本来は地方の税収なのだ。しかし、地方交付税が足りないから、借金してもらっている。未来の地方交付税の増収をあてにしているのだ」

という理屈です。

 つまりは、地方による「負担の先送り」ということです。

 しかし、負担の先送りと言っても、人口減少社会ですから、先送りは解消されることなく、むしろ先送りの金額は雪だるま式に増えていくという見込みしかありません。(クリックすれば大きくなります)

国の借金.PNG

 国の借金ですが、明治時代は2億円くらいだったのが、経済規模の拡大により、現在は1000兆円を超えています。500万倍以上になっています。

 だから、自分は国の借金がいくら増えようが心配していませんし、むしろもっと増えるべきです。国の借金というのは、経済規模に応じて増えるのが当然なのです。
ですから、自治体が負担の先送りをすることも問題視していません。

 ただ、自治体のなかでも、極端に悪いと国に見捨てられます。夕張市がその典型例です。
借金問題に関しては、館山市は悪い方ではありませんから、借金残高については私は心配していません。

 問題は手元の貯金が足りずに、将来的に市役所の建て替えができないのではないかということです。このことは、また改めてブログに書きます。

 長くなりましたが、この「有利な借金」という複雑な制度を国はやめるべきです。こんな複雑なことをしても良いことは何もありません。国が借金をして、自治体に配ればいいだけの話です。
                                



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