SSブログ

中村哲さんを偲ぶ 2 [平和]

(前日の続き)

 人ごとではない。私達もまた大きな転換点を生きている。アフガンで起きたことは、形を変えて世界中で起きる。
 時代が自明とする錯覚は確かにある。かって「満蒙は生命線」と日本中が勝手に思い込み、戦いに狂奔したことがあった。だが敗戦の小国・日本にとって、ほとんど唯一の拠り所が、国土の自然であったことは思い起こされるべきだ。戦争が覚めた時、誰をも慰めて命を与えた。
 敗戦直後の深刻な飢餓は、わずかな時期を除けば、自らの食糧増産の努力で克服された。政治以前に、豊かな郷土の自然こそが、実は「生命線」だったことは、ほとんど教えられなかったと思う。

 天与の恵みをおろそかにせず、命を大切にする。それが国を守ることだ。あれから六十余年、山林が荒れ、農漁村がおろそかにされ、産業廃棄物や放射能におびえる世相は、とうてい次世代に引き継ぐべきものではない。郷土とは領土ではない。寸土の問題を煽る前に、もっと果たすべき道があるような気がしてならない。

 ―悠々たる大河は、黙して人間の愚行を見守ってきた。我々の努力が天意に忠実であることを祈りたい。


中村哲さん.PNG


nice!(0)  コメント(0)