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三菱商事・三井物産燃料用鉱山撤退 [石炭火力発電所]

 日経新聞12月23日付電子版は「脱石炭の波、商社にも 三菱商事など燃料用鉱山撤退 」を報じている。日本の商社まで世界の波が押し寄せた。出光興産はどうするのか? kawakami


 三菱商事は豪州の2つの炭鉱をスイスの資源商社グレンコアなどに総額7億5千万豪ドル(約600億円)で売却することで合意した。承認手続きを経て19年中の売却完了を予定する。売却益が出る見通し。2鉱山では日本の年間の燃料炭輸入量の4%に当たる450万トンを生産していた。
18年前半にも豪州で別の燃料炭の鉱山を売却しており、今回の売却で保有権益はゼロになる。

 三井物産も豪州で保有する燃料炭の鉱山権益を豪エネルギー企業のニューホープに2億1500万豪ドル(約170億円)で売却を決めた。19年中にも手続きを終え、燃料炭の鉱山権益はなくなる。両社は石炭火力発電所を持つ電力会社には市場で調達した燃料炭などを供給する。

 石炭は発電やボイラーの燃料になる燃料炭と、鉄鋼原料のコークスになる原料炭がある。鉄鋼メーカー向け供給の代替がない原料炭の鉱山権益の保有は続ける。

 燃料炭は他の化石燃料に比べ安価なのが特徴だが、燃焼時の二酸化炭素(CO2)排出量が天然ガスの2倍近くある。
 近年は環境などへの配慮を重視するESG投資が拡大。運用規模は16年時点で約23兆ドル(約2500兆円)に及び、世界の投資マネーの4分の1を占めるといわれる。企業は対応が遅れれば、機関投資家が投融資を控える「ダイベストメント(投資撤退)」のリスクが高まる。

 ノルウェーの政府年金基金は15年、8000億円規模の石炭火力の関連株を売却。国内でも日本生命保険や第一生命保険などが、石炭火力への新規融資を取りやめる指針を公表した。三井物産の安永竜夫社長は「環境配慮の流れが強まり、炭鉱が投資を回収できなくなる『座礁資産』になるリスクがあった」と話す。

 資源業界の動きは海外勢が先行する。豪英リオ・ティントは18年3月に豪州の炭鉱を22億5千万ドルで売却を決め、石炭資産を持たない初の資源メジャーになった。豪複合企業ウェスファーマーズも石炭から撤退する。

 商社は発電事業でも脱石炭を進める。日本の総合商社で発電能力が最大の丸紅は、石炭火力発電の新設をやめる方針だ。既存の石炭火力発電所も30年までに半減させる。石炭火力の利益は年100億円規模とみられるが、「再生エネで勝負できる」(国分文也社長)と判断。電力事業における再生エネの比率を23年までに現状の1割から2割へと引き上げる。

 住友商事も石炭火力を減らし再生エネを増やす。宮城県で計画していた石炭とバイオマス(生物資源)を混ぜて燃やす発電所は、燃料をバイオマスだけに切り替えた。

 日本勢は比較的CO2の排出量が少ない「超々臨界圧」と呼ばれる発電技術は維持する構え。日本のプラントメーカーや電力会社が先導し開発した技術で、国内にも多くの発電所が稼働する。新興国の電力需要増に応えるため、「安価で高効率な超々臨界圧の石炭火力が必要」(大手商社幹部)。

 海外勢は石炭関連すべての投資を控えるケースが目立つ。脱石炭の波が超々臨界圧まで及ぶと、日本勢は戦略の見直しを迫られる可能性がある。

三菱商事オーストラリアの炭鉱.PNG

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