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袖ケ浦市は今のままでよいのか 3 [市政全般]

 流山市は財政力11位だけど、していることがすごい。今日で連載は終わるが、群馬県水上町の状況がテレビで放映されていた。地元の農業改革である。財政力はプライドの問題ではない。国からの支援がないというだけで、財政力1以下になったら、何らかの国からの援助が出る。賢い自治体はこれを巧妙に使っている。袖ケ浦市の企画財政部長は県からの出向であるという。なぜ独自に企画財政を自在に考えることのできる職員を育てようとしないのか・・不思議なことだ。  kawaka\mi


◆ 安い金額で豊かな時間を過ごすことができるロンドン

藻谷 それがまさに20世紀と21世紀の決定的な違いですね。黙って座って街を消費しなさい、出来上がったインフラを享受しなさいという段階は20世紀で終わっているのに、供給側のマインドが古いままだから、街が面白くならない。

大西 私がロンドンに住んでいる4年間で学んだのは、大英帝国時代からのストックのすさまじさですね。公でもプライベートでもない「コモン」と呼ばれる広大な野原があって、週末になると人々が三々五々集まってくる。それでその横でオーケストラが「魔笛」をやっているんです。かかるのは安ワインの代金くらいで、何とも豊かな時間を過ごすことができる。
 それに対して日本で行われている、ショッピングセンターで思いっきり買い物をするとか、休みの日にパチンコをするとかいう、フロー型の時間の過ごし方というのはどこか貧しい。ロンドンの例は藻谷さんが提唱している「里山資本主義」と共通点があると思うんです。

藻谷 先日、ジョージアやアルメニアというヨーロッパの最貧国に行ってきたんですが、街頭にはゆったり今を楽しんでいる人たちが溢れていました。日本にも、人々が街でゆっくりと楽しく時間を過ごして、それぞれを認め合うという時代はいつか来るんでしょうかねえ。

 ◆ 新設中学の校則を全廃
大西 話を流山に戻すと、これまでバリバリと働いてきて、しかもグローバルなことも知っているお母さんたちが集まってきて何が起きたかというと、中学校の校則がなくなりました。

藻谷 ほう! 

大西 そういうお母さんたちの価値観からすると、前髪が目にかかっちゃダメとか、スカートがひざ上何センチとか、そういう校則は何の意味があるんだ、それは何のためにやっているんだ、ということになるわけです。
で、教育委員会を説き伏せて、新設中学の校則を全廃してしまったんです。

藻谷 大変に良いことですね。社会には存在しない、学校の中だけにしかない規則をとにかく守れというだけでは、自主・自律の精神は育たない。

大西 そういうことを言えて、教育委員会を動かせちゃうお母さんたちはすごいですよ。

藻谷 元々いた地元の人たちからすると、よそからすごい人たちが集まってきちゃったなあ、という感じでしょうか(笑)。

大西 もちろん抵抗勢力があるわけです。「静かな流山を返してほしい」とか。  でもお母さんたちはめちゃくちゃ戦闘力が高いんですよ。「静かなままじゃ財政が破綻しちゃうでしょ」とディベートでも負けないし、必要なデータはすぐ集めてくる。世界の学校は今、北欧ではこうなっているとか、調べてくる。

◆ 空気を読まない市長

藻谷 そういう時、流山のキーパーソンである井崎義治市長はどうするんですか? 

大西 市長は米国の大学院で地理学の修士課程を修了した都市計画のプロで、移住した流山が無思慮な開発で壊されるのを見かねて2003年、市長になった人です。普通の政治家と違って相当空気を読まない人ですから、既成勢力の言い分をそのまま聞くということはないですね。
自分の頭で正しいと判断したロジックを選びます。

藻谷 市長は今60代後半ですが、その年齢にしては極めて珍しいグローカルな人ですものね。アメリカで都市計画コンサルタントをやっていた時も、普通にローカルとグローバルなことを同時進行させていて、しかしナショナルなことはやったことがない。そういうお母さんたちを呼び寄せる匂いを、本来的に持っている人なんでしょうね。

◆ 二つの基本的な欲求に応える

――岸田政権の少子化対策についてはどうお考えでしょう。

藻谷 いま0~4歳の乳幼児の数が増えている市町村は、流山を含めて全国に100少々あります。1700の中で100しかないという言い方もできますが。その半分は、「消滅する」というレッテルを勝手に貼られた過疎の農山漁村です。  都市部でも過疎地でも、そうした市町村に共通しているのは、「子供を産み育てながら仕事もする」ことが、周囲に支えられつつ当たり前にできるということです。
 普通に働きながら子供も産み育てたいのに、諸事情でどちらかをあきらめさせられるというのは、そもそも人権侵害なのです。人権を最大限守るのは、地域としても自治体としても当然のこと。人口増だの経済活性化だのは、その先にくっついてくる結果にすぎません。
 働きたいし、子育てもしたい。この二つの、人間の基本的な欲求に同時に応える努力をすると、人口は増える。それを証明したのが流山ということなのではないでしょうか。

大西 4月の統一地方選で、井崎市長は6選を果たしましたが、市長選には他に2人が立候補し、市議選には定員28人に対して37人が立候補しました。
 地方選は対立候補者が出て来ず無投票になる例が少なくない中、流山市は「俺にやらせろ」「私にもやらせて」とまさに「すごい」ことになっています。  市民と市政にある程度の覚悟があれば、こんな状況が生まれるわけで、流山でここまでできたのだから、他の自治体でも少子化についてあきらめるのはまだ早いと思います。   (この稿を終わります)

大西康之(おおにしやすゆき) ジャーナリスト。1965年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、日本経済新聞社入社。欧州総局(ロンドン)、日本経済新聞編集委員、日経ビジネス編集委員などを経て2016年独立。『起業の天才!  江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』など著書多数。

藻谷浩介(もたにこうすけ) 地域エコノミスト。1964年山口県生まれ。東京大学法学部卒業。日本総合研究所主任研究員。2000年ごろより、地域振興や人口成熟問題に関して精力的に研究、講演を行う。『しなやかな日本列島のつくりかた』(対話集)、『里山資本主義』など著書多数。 「週刊新潮」2023年5月18日号 掲載
新潮社




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