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水道の民営化と公益化 4 [水道]

 近藤さんの講演は、水道が本当に危機的状況にあるのだという事実をしっかり見つめてほしい・・という訴えの項目に入ります。  kawakami

☆ 水道の危機的状況
 旧水道法では、給水することは、憲法が保障する生存権を具現化することだから、一般財源からも補給しつつ高度の給水体制を創り上げてきました。しかしそれが「独立採算制」を強調するようになり、一方では給水人口はどんどん減っていきます。採算をとるためには水道料を上げなければなりません。こうして受益者負担は増えるという現象が起きるようになってきたのです。水道の危機的状況を生み出した要因はまだあります。そのことを考えてみましょう。

① 総括原価方式・・・水道料金は電力と同じで、総括原価方式をとっています。電力で言うと、施設経費、この中には廃炉費用も含みますし、あの高額な役員報酬、株主配当と積み重ねそれを利用者の数で割る方式です。
 浜松の説明だと、公営だと水道料金は1,46倍に上がるけれど、コンセッション方式だとそれは抑えられます・・と言っていますが本当でしょうか?

② 技術力・・・1984年に私は就職しました。当時名古屋の水道局職員は3500人でした。それが現在は2000人です。仕事の機械化が進んだという理由ですが、別な見方から言うと高度になったとも言えましょう。例えば施設を更新する場合、施設を稼働しながら更新作業を進めることはとても困難なことです。そういうことのできる技術者が少なくなってきています。

③ 職員採用と言っても、応募者が集まらない。採用しても定着率が低い。仕事がきついので、民営化を言われると‥それも仕方がないのかな…と思ってしまう傾向が多くなってきています。
10万人未満の地域だと職員は4人です。3万人未満の地域だと担当者はただの一人です。
その一人職員の所で、仕事内容を聞いてみました。そうすると、とにかく自治会長と工事関係者と仲良くしないと仕事が成り立たないという答えが返ってきました。こういう現実です。「1年間で疲れ果てた」と話していました。

 こういう状況の中で、初めは部分委託、そこから徐々に委託業務が広がっていき、ほぼ全面の委託になる。国は「行政の仕事はコア部分でいい。あとは民間委託にしてしまえばよいのだ」と強調しています。
 浜松でも、職員一人当たり5000人の給水人口を担当しています。その職員の殆どが40代以上で、20~30代は数えるほどしかいないという状況です。
「生存権を保障する給水という行政が果たさなければならない仕事」は、政治の中枢によってどんどんその意識が崩され、民営化(商品化)もやむを得ないという危機的状況に陥っている事実を、受益者もしっかり見つめてほしいものです。

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水道の民営化と公益化 3 [水道]

 今日は、昨日に続き「広域化と官民連携」という項目に移ります。kawakami

☆ 官民連携とは
 大資本の要請を受けた「政」が「官」を使って水を商品とする動きです。
トップセールスから、周辺に広げ、さらに広域化し(県がしてくれる)丸ごといただく方式。
 ここ君津地域は先に広域化をしてしまいました。広域化の次は、人は減らし、一括委託へと進みます。

 この方式を主導したのは、菅官房長官の右腕と言われた福田という人です。この人は、浜松市長と一緒に、フランス最大水企業ヴェオリア社の本拠地、パリに行ってきた人です。このことが発覚し辞任に追い込まれました。フランスのルオーは、国策会社であったことがはっきりしました。と同時に巨額の報酬を得ていたゴーンは、いつしかもみ消されてしまいました。

☆ コンセッション方式とは
 大体カタカナで書いた政治方式にまともなものはありません。なんとしても儲けるための方式です。
▼ 資産は公が保有します・・民間は固定資産税を払う必要がありません...
▼ 運営を任せます。運営権は物に対して設定。バスの例でいうと、新車購入は公がして、そのバスの運営を任せます。民間会社は、安い労働賃金、車のオイルは制限期間以上使用し、タイヤは安いものを付け、儲けていく。契約年が切れると、老朽化した車は新車に更新。新車は公が手配する。 こういうシステムだから、業者は決して損することはない。

 浜松市市長は、この方式を、昨年10月の議会で「運営委託方式」と呼び、一括して委託する仕組みですと名付けた。

▼ 委託と運営権譲渡とは全く違うこと
① 委託とは、自治体に水道使用料金が入り、それを委託した業者に契約にしたがって支払い、その会計報告が議会にされることで透明である
② 「運営委託方式」事実の名称は「運営権譲渡」方式は、水道利用料金を民間業者に支払い、業者は「利潤・株主配当・諸経費」を差し引いた残金を運営権対価として自治体に渡す。これは契約で決まります。内容は非公開である。業者にとってこれほどおいしい方法はない。

☆ パリ市で水道再公営化の初代局長の来日講演
 フランス最大の水企業、ヴェオリア社は、民営化時期の利益率を7%と言っていたが、再公営化以降よく調べてみたら、20%以上あったはずであることが分かった。しかし内容が非公開だから正確には不明であることを話されていた。
 日本は、フランスの前は、イギリスが水道の模範であった。イギリスでは「モニタリングをしっかりやるから大丈夫」と言っていたが、全然見抜けなかったというのが現実であった。
 また契約の中にはISDs条項というのがある。(投資家対国家の紛争解決)これにも気を付けなければならない。自治体や、国を相手にした契約違反賠償請求可能の内容である。
このため、ひどい目に遭った外国の例は多い。 (続く)



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水道の民営化と広域化 2 [水道]

 水道の民営化・広域化は何をもたらすか
  水道事業の現状と水の公共性を考える。 自治労連公営評議会事務局長 近藤夏樹

 33年間名古屋の水道に勤めてきました。上水道畑で3か所の浄水場を回り、監督部署に移り現在に至っています。全国的には、私のような1か所に勤務を続ける人は減ってきています。一般部局との人事交流と称して、水道とは関係のない部局に変更になる。名古屋ではそのような人事はしないように進言し実行されているけれど、全国的には水道の専門的な技術がどんどん失われつつあるのが現状です。
そうするとどうなるのか。「市民のための水道を考えることができなくなってきている」これが現実の姿です。

★ 国の進める広域化
 袖ヶ浦に2年前に所用できたことがあります。既に広域化が進んでいる状態なので調べてみました。
 東京湾の周辺は、地下水の非常に豊かな地域です。ですから井戸が水源になっています。それが、県・国の政策に従う形で大きくシフトされてきました。井戸水がダム水源に変わったのです。井戸水水源よりも高い水を知らぬ間に買わされるシステムに組み込まれたのです。水は選択の余地はありません。
 広域化してもコストは下がることはありません。それでも国はさらに広域化を進めるべく準備しています。

★ 安全な水を作るうえで必要なこと
 私たちは、水道のことを論議するとき、「このことには反対だ」とは決して言いません。こういう言葉を使うと、返ってくる言葉は「既得権擁護のためだろう」という言葉です。それは私たちの本意ではないので、対策は示さず「皆さん、考えてみてください」と問いかけることにしています。
「おいしい水ってどんな水を言うのでしょう?」
「なぜ水道水は安全なのか考えてみたことがありますか?」
というように・・みんなに投げかけ、みんなで考えることをすすめています。
 安全で美味しい水を作るには、一定のコストと、人材と、それに伴う技術がぜひとも必要だということを、わかってほしいからです。

★ なぜ水は公営化であったのでしょう
 基本は憲法第25条に「すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあります。国会論議では、どの大臣もこの項目を引き出し水道公営化の理由としてきました。しかしこの生存権が民営化を進めるうえで邪魔になってきたのです。

★ コンセッション方式推進に当たって
 竹中平蔵という自分で企画し、自分で具体化し儲けている人物がいます。彼は水道を商品化しようと考えました。
 政府資料の中に「トップセールスリスト」というのがあります。そこにはコンセッション方式を具体化して行くうえで、必要な条件とそれに該当する地域名が書かれています。人口が一定数以上であり将来的に減少率が20%以下であること。利益が確保できる地域であること。そこで上がった名前は
浜松市(市民運動で延期表明)大津市、仙台市(ここは知事が先頭に立って推進しようとしている)等の名前が並び、大阪、奈良などの地名もあったのですが、議会で否決されました。
 その他は、(がずさ企業団も含めて?)の地域は、コンセッション方式成功事例として扱われる程度。
                           (明日に続く)

 

 

 

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「大気と水は人権」学習会 1 [水道]

 8月18日(日)酷暑の中の、それも学習会と聞けば、2の足を踏んでしまうであろうに・・と思っていたのだが・・『大気と水は人権』学習会を呼びかけたところ、30人規模を予定した袖ケ浦市民開会2階研修室は、何と40人を超す人たちで満室になってしまった。

「大気と水は人権」とは
① 化石燃料による地球温暖化に終止符を打つ事。それは人類生存にもつながっていること。石炭火力発電所建設計画断念の意味は、憲法第11条にある基本的人権に由来するものであることを改めて確認する。
② 日本では「水と安全はタダ」それが当たり前であった。行政はそのことを保障してきた。(旧水道法)なぜならば、「水はいのち」だからである。それが新しい「水道法」で、水は商品になる。そのことは、私たちの人権を阻害することなのだ。黙っていてよいのか・・
そのことを学ぶ。

 「かずさ水道広域連合企業団」は上総4市で構成されている一応行政組織である。その行政区域は、袖ケ浦、木更津、君津、富津4市である。しかし4市を一回り広げた、市原市からも、南房総市からも参加者が駆けつけてきてくれた。住民がいかにこのことに対して、鋭い危惧を抱いているかを反映したものだと思う。

★ 石炭火力発電所建設中止から、自然エネルギーへの方向性を強化するためには、各家庭の電力購入個所を変更し、最も無責任な東電を追い込むこと・・報告は国際NPO・FoE JAPANの高橋英恵さんだ。大学を卒業してこの世界に飛び込み、まだ2~3年の若者である 。若さはつらつ、日本にこのような若者がいるんだと、瞠目に値するその意気込みをたっぷりと、聞かせていただいた。

★ 近藤夏樹さんは、岐阜から駆け付けてくださった。名古屋水道局に勤務して33年。この道一筋の方である。「近藤先生」とお呼びしたら「先生はやめてください。根っからの水道労働者ですから」と、とっさに返ってきた。仕事に、誇りと、自信と確信を持っていらっしゃる。肩書はたくさんあるので省略する。ただ、日本全国で起きている水道問題を討議する全国大会で、中心になって活躍されている方である。
 すかっとさわやか・・・話されたその内容を明日から連載する。

                            kawakami  
 


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