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6.17最高裁判決に想う [原発災害]

 原発集団訴訟に対し長い間支援活動を続けてこられた、市原市の永野勇さんが、今回の最高裁の採決に対し怒りを込めた感想を寄せられた。ご本人の承諾を得て掲載する。なお明日は三浦裁判官の判決を掲載する。   kawakami


 私は、6月17日に判決が出た、原発集団訴訟の国の責任の可否については、9割がた国の責任なしの判決が出ると予想し、一部の人に話していた。そしてその場合最高裁がどのような論理構成で国の責任は無いという判決を書くのか、その点に注目していた。
しかし最高裁の3人の多数意見は、「長期評価の信頼性」「津波到来の予見性」にはほとんど判断を示さず、「結果回避可能性」だけの判断(対策を取っても事故は防げなかったので、国に法的責任は無い)という判決であった。これは別の言い方をすれば「最高裁の権威をおとしめた判決」と言わざるを得ない。
 裏を返せば、「結果回避可能性」と「津波到来の予見性」で最高裁としての判断を示していたら判決のような「結果回避可能性」の結論を導き出すことは出来なかったのであろう。

 6月17日に最高裁第二小法廷は、原発集団訴訟である千葉・群馬・なりわい・愛媛の各訴訟に対して国の責任の可否について統一見解を示した。
 その判決内容は端的にいえば、あまりに大きな津波だったため長期評価を前提に対処しても事故を防げたとの判断には無理があり、国の法的責任は無いというものだった。
言い換えれば、国策として進めてきた原発が日本始まって以来の公害・環境問題を発生したにも関わらず、国は何もしなくて良いという判決である。

◆【司法がこんなことで良いのか】
 千葉訴訟弁護団長の福武公子さんは、報告集会で次のように述べている。
 今回の最高裁判決は、立法・司法・行政の三権のうち司法が行政との関係で独立していない事、追随している事を天下に示した恥ずべき判決だと思っている。原発については同じ最高裁で1992年の伊方原発訴訟で、原子炉施設の安全性が確保されない時は、当該原子炉施設の従業員やその周辺住民等の生命、身体に重大な危害を及ぼし、周辺の環境を放射能によって汚染するなど深刻な災害を引き起こすおそれがあることにかんがみ右災害が万が一にも起こらないようにすると明確に述べている。

◆【どこがおかしいのか】
1) 大問題なのは、福島第一原発の大事故が日本始まって以来、最大の公害・環境汚染を引き起こしたにも拘らず、原発を国策として推進してきた国の法的責任が無いということである。
2) 長期評価の信頼性と巨大津波到来を予知できたかという2点については、明確な判断をさけ、結果回避可能性だけは「現実の地震・津波は想定外の規模で、長期評価を前提に防潮堤を設置しても事故は防げなかった」と判断した。(3人の裁判官)ということはや
ってみなければ分らない事を、事故は防げなかったと述べており何もしなくて良いのだといわんばかりである。
3) 東電に対し対策を講じさせていてもその内容は当時の常識から考えて防潮堤の設置となるから事故は防げなかった。この事は3人の裁判官が民間企業の実態を知らないことによる結論である。(この点ついては次の4項で触れる)
4) 3人の裁判官が民間企業とりわけ電力という公益事業を知らなかったための失態
 民間企業とりわけ電力という公益事業は所管官庁からの命令等があった場合は、今回で言えば「技術基準適合命令」が出された場合、重く受け止め社を上げて色々な角度から検討をして落ち度が無い様に対処するものである。ところが3人の裁判官はこのような事を知らないので、水密化などは出てこないなどと勝手に判断し国を擁護したのである。
 技術基準適合が出された場合、どうなるのかというと、先ず当然防潮堤は論議される。それ以外に敷地が津波により浸水された場合の対策についても論議される。その場合、配電盤・重要機器等の対策を論議する中で、高所に移せるものは移し、どうしても移せないものの対策をどうするかという論議になり、その結果として当然水密化するしか方法が無いとう結論に至ることは容易に判断できる。
5) 原告に寄り添った内容になっていなかった。
3裁判官は原告の切実な声に耳を傾けることは無かった。内容的にはほぼ国の主張を認め原告の生きる権利を優先するという姿勢は残念ながら感じられなかった。
6) 以上のことから判断出来ることは、3人の裁判官は正しい議論をして結論をだすとい事 を避け、国の責任を免責するために安易な方法を取ったものと言わざるを得ない。

◆【原告の生きる権利を認めた三浦守裁判官】
今回の最高裁裁判は言葉を変えれば、原告の生きる権利を優先するのか、原発による経済活動を優先するのかの裁判であった。検察官出身の三浦守裁判官は、原告の生きる権利を優先する立場を明確にしたが、他の3人の裁判官は原発による経済活動を優先する立場を取った。原発回帰の力が強まる状況の中で、三浦守最高裁判事の勇気ある態度に拍手を送りたい。
【今後に向けて】
 4つの訴訟自体はこれで終止符を打ち、今係属中の裁判に対する国の責任については、今回の結論が大きく影響することは事実であろう。
しかしそうであれば尚更、係属中の裁判の賠償金額増額の取組みを強化することが必要である。そして今後原発被害者全員の救済に向けた取り組み、脱原発の取組みが必要である。
そのためには、今回の最高裁判決の問題点を分りやすい内容で国民に広く宣伝し、あわせて係属中の裁判の中でも今回の最高裁判決の問題点を指摘し、大きな国民的合意のもとに、最高裁が国の責任を認めざるを得なくなるまで取り組む必要がある。頑張りましょう。


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怒りの感想3 [議会ウオッチング]

 岩井の山の井さんから、
「埼玉新聞2021年3月10日の記事を検索すると、春日部市議会で、袖ケ浦市議会で起きたことと、同じことをしていたことが公開され、中止に至ったことが書かれてありますよ」
と聞いたので。探してみた。あった!以下当日の新聞記事を紹介する. kawakami

◆ 市議会「賛成討論」の原稿、市が作成し議員提供…長年の慣行・・・

 埼玉県の春日部市議が議会で討論する際の原稿について市職員が作成していたことが8日、分かった。依頼を受けた各部署が、業務中に作業を行っていたという。市は「長年の慣行だったが明らかに誤解を招く」として作成をやめた。

 市が提案した議案は、勉強会などを通じ議員が賛成か反対かを判断し議会の委員会や本会議で賛成反対それぞれの立場から意見を述べ、討論を受け採決する。市は長年にわたり、議員が作成するはずの討論原稿を市側が作成していた。一部の議員は原稿をそのまま読み上げていたという。

 市によると、議案提出前後に、政策課が庁内のメールを通じ各部署に賛成討論の原稿作成を依頼し、業務中に幹部が作成していた。反対討論や一般質問の原稿は作成していないという。
 原稿を読んだことがあるという市議の一人は取材に「初めはおかしいと思ったが、長年の慣れで、議会の中では暗黙の了解だった。まひしていたと言われてもしょうがない」と話した。 

 昨年秋、市職員で構成する労働組合から「議員が書くべき原稿を公務員が公然と業務時間中に作成することは許されない」などの指摘を受け、市は原稿作成をやめた。当初予算案など議案が多い3月議会では、業務の軽減も図れたという。

 市政策課は「かなり前から慣行になっていた。議案を正しく伝えるための資料として作成していたが、明らかに誤解を与える内容だった」としている。


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