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ショートショート2 仙人以上 [環境問題]

 今回の、ショートショートは1960年代の高度成長時代に書いたもので、当時は、公害、スモッグ等が話題になっていましたので、それをショートショートの題材にしました
〈仙人以上〉
                                   大松右京作

 昔々、ある所に数波満という仙人が住んでいました。
仙人は人の心を読み、事物を透視し、好きな所へ行くことが出来ました。

 ある時、一時の気紛れで数波満仙人は、里へ出向くことにしたのです。
仙人にとって「距離」は無いに等しかったので、軽い気持ちで出かけたのですが、チョッ トした手違いが起こり・・・・。1964 年、東京、ここは活気に満ちていました。地面を掘り起こし、高い建物を建て・・・。仙人は距離だけではなく、時を飛び越えてしまったのです。

 別に急ぎ帰る必要もなし、暫く街を見て回ることにしたのです。そうした仙人を、タレント探しに血眼になっているスカウトが見逃すはすがありません。彼らの話術には、さすがの仙人も負けてしまい、いつのまにかテレビの出演契約書にサインさせられていました。
 仙人の術はものすごく評判を得て、わずかの間に茶の間の人気者になり、ワッペン、シー ルの類まで出る始末・・・。

 そうこうしている間に三か月が過ぎ、その頃より仙人は、体の調子が変になり始めたので す。仙人が病気になんておかしな話ですが、医者に診てもらったのです。医者は言いました。
「食あたりです。放っておくと悪化しますよ」
と言われたのですが、テレビタレントの常として、まったくの多忙・・。

 やがて病気が悪化、発病後半年で死んでしまったのです。病名は「ガン」。仙人には現代 の食べ物が合わなかったのです。え?食物ですか?「かすみ」です。
 さすがの仙人も、東京のカスミには参ったようです。ところで現代人は仙人ですら病気に した「カスミ」を吸いながらも、平気でいるのです。   してみると現代人は??

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