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「海側区画整理事業の問題点」を考える 3(最終) [区画整理事業]

 
① 「田舎の旦那衆をだますのは赤子の手をひねるようなものだ」と、あるゼネコンの職員が話したのを聞いたことがある。区画整理事業は一応終着段階を迎え、赤字にはならなかったし、ホッと一息つくところであったのに、ごたごた残っていることがあるという。この分だと事業終結は(30年3月終結予定)1年以上延期になるらしい。
それはなぜか・・・以下は毎日新聞2016年1月22日の記事である。少し長いが全文を記載する。
 
 千葉県袖ケ浦市の大規模な区画整理事業を巡り、地権者の承認を得ずに鉄精製時の副産物である「製鋼スラグ」が大量に埋設されていたことが明らかになった。スラグには水と反応して膨張する性質があり、地盤の不安定化が懸念される上、専門家は植物などに影響を及ぼす強アルカリ水が溶出する可能性も指摘。地権者からは「我々の土地を実験台にしているのか」と批判する声が上がった。

 施工した共同企業体(JV)のトップで中堅ゼネコンの奥村組(大阪市)が地権者らに説明した内容によると、JVはスラグの排出元となった新日鉄住金(東京都千代田区)と2011年5月に、スラグの利用について協議していたという。奥村組が正式に施工業者に決まったのは同年7月。その2カ月も前から協議が進められていたことになる。

 奥村組の担当者は翌12年1月、区画整理事業組合の理事に「地盤の強度が出なかった(低かった)。地盤改良のためスラグを使う」と報告したが、費用や工事の詳細は報告しなかった上、この時点で既にスラグは納入されていたという。15年2月、組合の意思決定機関である「総代会」から、同会の承認を得ないまま工事を進めた理由を問われた奥村組の担当者は「いろいろと不都合があった。地権者に不安を与えるといけないと思った」と回答。被害が出た場合の保証期間を尋ねられると「完了後2年」と答えたという。

 事業を監督する千葉県の指示を受けたJVは15年9月、外部の検査機関に委託し、施工が正しく行われたかを調べるボーリング調査を実施。これによると、スラグを混ぜて地盤改良したとされる層の厚さは数センチから2メートル超まで大きな幅があり、一切使用されていない場所もあった。

施工に不安を感じた地権者の有志が地盤を掘削したところ、土と混ぜられることなく固まっている数十センチのスラグの塊も次々と見つかった。男性地権者は「こんな欠陥だらけの土地を子や孫に引き継げない」。別の男性地権者は「我々の土地が実験台かゴミ捨て場にされたのではないか」と憤った。県は先月18日、土地区画整理法に基づき改善を勧告した。

 スラグには雨水などと反応して膨張する性質があり、道路で利用されるスラグには日本工業規格(JIS)で膨張率に基準(1・5%以下)が設けられているが、宅地利用での基準はない。
 別メーカーからスラグをもらい盛り土に使った群馬県榛東村の民家では床が隆起する問題も起きた。 また、袖ケ浦市の現場のスラグを地権者の許可を得て毎日新聞が環境省指定の第三者機関で鑑定したところ、水素イオン濃度(pH)が12前後の強アルカリ水が検出された。
(以上毎日新聞第一面記事)

 区画整理事業を行うにあたって業務代行者との契約は重要である。造成工事に当たって、山砂埋め立てからスラグ埋め立てへの変更は、区画整理事業にとって重大な仕様の変更である。仮にそれが地盤改造の目的であったとしてもスラグの使用は仕様の変更に当たる。区画整理法では重要事項に位置づけられる質のものなのだ。だから、このスラグ埋め立てに当たっては、地権者の3分の2の同意に相当する重要事項なのである。

 業務代行者からは組合理事に説明した・・とのことであるが、そのレベルの問題ではない。もっと慎重に、ていねいに、対応すべき事項なのだ。当初の契約では山砂を入れることになっていたものだ・・それが一方的に破棄され埋め立てを強行されてしまった。代行・組合相互の責任は重大である。

 このことと同時に、とんでもないことが明らかになった。管理組合運営の主導権がすべて代行業者にゆだねられていたという。(銀行通帳まで代行業者が管理していたとも聞いている)。なぜこのような状況になったのかは、後述する。

 400人近い地権者がいるという。そのうち約100名の地権者が立ち上がり「地権者の会」を設立し、業務代行者と区画整理組合との交渉の形をとり、裁判所の調停へと進んだ。具体的には「原状に復すること」を基本に、「宅地を買い上げせよ」「今後スラグによる事故が起きた場合の保証はどうするのか」等、要求事項は当然のことながら多々ある。

 裁判所を入れての調停はその第一段階が終わり、調停案が出た。その説明会が11月23日に開催されたが、到底納得できる内容ではないと、再度の説明会を要請し、来年に持ち込まれている。
どのような方向へ進むのか‥これが解決しないうちは、解散は実現しない。


⓶ なぜそのようなことが起きたのか。

 第1に、このぶざまな状況はどうしておきたのか。区画整理事業に習熟した人がいなかったこと。つまり役員が無知のまま代行業者を信頼し任せっぱなしになったことに第一の原因があると思われる。「地権者の会」には今回のように優れた人もいるというのに・・・・。

 第2の原因は、当時地元を含め周辺に成功事例がいくつもあった。例えば長浦駅前の区画整理事業では90haの土地区画整理で三井不動産が業務代行となり、当初40億円の負債があったものを、最終的には10億円の利益を上げたという。士気の区画整理事業では、320ヘクタールの日本一と言われる区画整理事業を成功させている。このときの代行業者は東急であった。アカデミアパークは178haの区画整理成功と、学ぶべき事例がいくつも身近にあるものを、学ぶ姿勢と熱意を見ることができなかった。

 第3の原因は市の指導性の欠如にある。スラグ報道がされた時の市の立ち位置は、被害者の立場に立とうとしなかった。風評を恐れ代行業者の言い分そのままの姿勢に終始した。事業は組合と代行業者が行うもので市は関知しない・・という姿勢であった。当時の市のコメントを読むと業者の言いなりになっていたことが明瞭である。業者の主張をそのまま代弁したようなものだ。契約の不当な変更(スラグ埋め立て)という最重要事項に触れていない。おそらく「みなす課税」と同じように「風評による販売への影響」で頭がいっぱいになったのであろうと推測される。これも大きな誤りであった。

 以上が今回の「みなす課税の誤り」の根っこに潜む「袖ケ浦駅海側開発(区画事業)」に関連した事態の経緯と問題点である。

 本来、袖ケ浦駅海側区画整理事業は、袖ケ浦市の表玄関を作る理念に燃えて計画されたものだと思っている。いろいろと意見の対立等もあったが、取り掛かった以上、誰もが成功を願って見守っていた。しかし、今事業の終結時に至って、関係者がスラグ問題で苦悩している。問題点の所在は明らかなことであるが、当事者同士の利害が絡み合っていることでもあり、これを当事者だけの問題に矮小化することは正しくない。当初の理念を生かす観点から、すべてをオープンにして、経験豊かな人たちの知恵も集め、第三者機関を設置しての対応なども含めた解決策を、市が先頭に立って模索していただくことはできないものか・・

 なぜこのような提案をするのか・・契約違反という犯罪に近い事実が判明した時点で、出された場当たり的市の方針のため、基本事項はうやむやになり、今日の混乱を引き起こすに至っているのである。せめて最後は市の責任で終わらせ有終の美を飾っていただきたい・・・海側開発で起きたスラグ問題は、現下の袖ケ浦市政の最大課題であると思う。私の願いを提起し、この稿を閉じる。

今年も多くの方にブログを読んでいただきました。
ありがとうございました。       
今までの最高は63834通/月です。今年の最高は49842通/11月でした。
新年は5日から出発します。      
 来年はこのままでは決して明るい年ではありませんが、
        皆さんとご一緒に佳い年に変えて参りましょう。


 市民が望む政策研究会  会長 関 巌   事務局長 富樫孝夫

 ホームページ  磯野忠昭  ブログ担当 かわかみひろし



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